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うがいは効くの、なぜ効くの?/インフルエンザ関係

 インフルエンザA(H1N1)型がいよいよ広がって来ているわけですが。

 ともかく、医療関係防疫関係諸氏の御努力には頭を下げます。
 実験室でさえ、微生物をある区域から(たとえばフラスコの中から、シャーレの中から、汚染チャンバーの中から)はみ出さないように管理するのにどれほど手間がかかるかという実感がある元・微生物研究屋としては、本格的国内感染者の確認までに、「時間があったなぁ」と思います。この数日がマスクや薬やワクチンを準備する「時間」に直結したんだと思っています。



 職場にも、「厚生労働省・インフルエンザの基礎知識」の3ページみたいなポスターが貼られました。
予防の基本
■ 流行前に
✔ インフルエンザワクチンを接種
■インフルエンザが流行したら
✔ 人込みや繁華街への外出を控える
✔ 外出時にはマスクを利用
✔ 室内では加湿器などを使用して適度な湿度に
✔ 十分な休養、バランスの良い食事
✔ うがい、手洗いの励行
✔ 咳エチケット
 いまちょっと気になっているのが、インフル予防手段としての「うがい」の有効性。
 うがいはあまり効かないという方もある一方で、文献を挙げて、「効く」と書いたページもあるわけで。
インフルエンザの予防にうがいは効果がないのではないかと、その根拠としてよくあげられるのが、「インフルエンザウイルスは気道の粘膜に取り付くと約20分で細胞の中に取り込まれるが、20分毎のうがいは現実的でない」というものです。
うがいは、口腔やのどを洗浄して、細菌やちり・ホコリなどを粘液といっしょに除きます。
また、のどを適度に刺激して粘液の分泌や血行を盛んにしたり、のどの潤いを保って、線毛運動の衰えを防ぐという効果が考えられます。
 上記の引用は両方とも、「感染と予防WEB・うがいはなぜ必要か」なのですが。たしかに、洗浄をメインに考えると、1日3回うがいをしても、効果は薄いと思います。
 しかし、「のどの潤いを保って、線毛運動の衰えを防ぐという効果」がメインだと考えるとどうでしょう。

誰にでも効くと、誰かに効くの間に

 誰にでも効く効果というのは、ある意味で考えやすいんですね。
 たとえば、特定の酵素の特異的阻害剤を投与して、酵素が効かなくなる。こういう化学的反応は、西洋医学の得意とするところです。
 ところが、「のどの潤いを保って、線毛運動の衰えを防ぐという効果」みたいな、曖昧感のある効果だと、誰でも同じではない。
 唾液の分泌が多い人、少ない人の差もあるでしょうし。
 唾液の量が同じでも、唾液の成分によって、保湿力のある人と、すぐ乾いちゃう人もあるでしょう。
 乾燥したときに粘膜が傷つきやすいかどうか(=傷ついてウイルスを通しやすくなるかどうか)も、人によって同じとは限らない。ちなみに、私はアトピー持ちですが、アトピー発症の一因として「表皮バリアの障害」があると言われています。表皮バリアに障害があるために、アレルゲンが皮膚を透過してしまって、アレルギーが起こるのですね。皮膚の透過性に個人差があるのであれば、粘膜にも個人差がないとはとても思えない。
 ある人は自前の唾液だけで粘膜を保護できるけども、ある人は1日の途中で水分を補ってやったほうが保護能力がアップする。そういう個体差はあるんじゃないかと思うのです。

私的仮説:「ちょこ飲み予防法」

 で。もし「潤いを保つこと」が効果があるとしたら、ペットボトルかなんかを持って歩いて、喉が乾いたら……水分が欲しい感じという意味ではなく、喉の粘膜が乾いた感じがしたら……ほんのヒトクチ「ちょこちょこ飲」んだらいいんじゃないの?と思うんですけど、どうですかね? 名づけて「ちょこ飲み予防法」
 たしかにうがいに比べると「細菌やちり・ホコリ」を一緒に飲み込んでしまうので。うへぇと思う方もあるかもしれないけど、食事するときに「細菌やちり・ホコリを一緒に飲み込んでるんだなぁ」とか普通、考えないでしょ。飲み物を飲むときだけそれを考えるのはナンセンス。
 という言い方もナンなので。もうちょっと科学的な言い方をすると。食事をするときは、かなりの量の食品が胃に入りますから、胃液がかなり薄まります。胃酸による殺菌効果もその分薄くなっています。
 けれど、「ちょこ飲み」の場合は、胃酸がほとんど薄くなりませんので、その殺菌効果は「普通に食事」よりむしろ上です。
(ただ胃酸過多の方にはちょっと勧められない方法かもしれない。人によって何かが入ってくると胃酸分泌が亢進しちゃう方があるので。胃が「なにかきた!」と胃酸をたっぷり出したのに、「ほんのヒトクチ」で終わってしまうと、胃に溜まったままの胃酸で胃のほうが傷ついてしまう可能性があります)
 一応書いておくと、「インフルエンザは細菌じゃないので、胃酸の“殺菌効果”は関係ないのでは?」という質問は、却下ね^^、胃酸の“殺菌効果”は菌体タンパク質の変性効果なので、ウイルスは変性=失活しちゃうと思われます。

持ち歩くペットボトル

 「ちょこ飲み予防法」に効果があるんじゃないか、というのは、あくまで私の個人的仮説なので、その点はよろしくです。(専門家さんのブログにトラバして、ご意見はうかがってみるつもりですが)
 で。下記は、「どんなペットボトルを持ち歩くか」という、「さらにその先」の話。
 電車の中などで、学生さんの鞄から覗くペットボトルを見て思ったことなんだけど。
 「バイ菌」が増殖しやすいペットボトル飲料と、増殖しにくい飲料って、普通の方はどの程度意識しているんだろう?
1.水(ミネラルウォーター)
 まず、安全なほうから言うと、水(ミネラルウォーター)。これは栄養がいっさいないから、判りやすいですよね。
2.茶類(ウーロン茶、緑茶、無糖紅茶)
 次に、栄養がない方面で、ウーロン茶、緑茶、無糖紅茶。お茶には、カテキンという成分があって、これに若干の防腐作用がある。「若干の」と書いたのは、酵母やカビはタフで、カテキンくらいあっても増殖するから。だから、砂糖入りの紅茶はダメ。
3.酸性飲料(果汁系、野菜ジュース)
 次に酸性飲料。「甘酸っぱい」系の飲み物、果汁系とか野菜ジュースとかは、それなりに栄養分があるので、水/お茶よりはだいぶ危険度が増すけれど。そこらへんに「よくいるバイ菌」のなかで増殖速度が速いのは大腸菌。大腸菌が酸に弱いため、それ以外の「ゆっくり生える菌」しか増殖できない。だから、持ち歩いても、短時間のうちに飲んでしまうのであれば、酸性飲料はまだしも「マシ」。
4.中性飲料(ミルク系、麦茶)
 最もアブナイのが、中性飲料。で。ちょっと書いておきたいのが「麦茶」。麦茶は、カテキンが入っていない。だから、「2.茶類」じゃなくて「4.中性飲料」。濁って来たら捨てろ!

最近の見っけもの

 上ではちょっと反論めいたことを書いてしまったのですが、『新型インフルエンザの知識と対策』さんは、基本的にはとても上質の記事を上げていらっしゃいます。
インフルエンザA(H1N1)型は発熱するとは限らない、それも1/3もの確率で
衛生兵が後ろから撃たれる戦場
──タイトルは(東スポメソッドで)原文とは変えてあります、ごめんなさい。

5/25,2:00追記 後でゆっくり読む。
Yossie^^'s Kingdom of Music 「医学」書庫
この方は、「インフルエンザA(H1N1)型は、実は季節性インフルエンザよりも致死率が高いのではないか」という疑いをもった記事を展開していらっしゃいます(ex1)/(ex2)。まだ全部は読みきっていないのですが。かなり説得力のある記事群です。ある記事に「医師として」とあるので、お医者さまですね。