小学生の思い出

 小学生のころ。近所に、「太陽テント」という会社のビルがあった。小学生の記憶なので、大きさの感覚はズレがあるかもしれないが、4階か5階だてくらいのビルで、前面にはまったく窓がなく、全面に人工の岩が貼ってあり、ところどころに、ぽつりぽつりと穴が開いていた。




 その近所に公園があって。公園のなかの土手には、よく似た穴が開いていて、そこからちろちろと水が湧き、公園の真ん中を横ぎって流れる、小川の水源になっていた。
 ビルに開いた穴は、見た目、それによく似ていた。しかし、「それ」は土手ではない。「ビル」である。ビルの内側から水が湧くのは変だ。ということが判る程度には、私は「理科」を理解していた。

 ところがあるとき。その穴に「くい」をさしてロープを通し、そのロープづたいに人が上っているのを見た。いまとなっては全く自信がないが、当時の私の目からみると「おじさん」である。ビルの下には人が立っていて、上がってゆく人を見上げている。
 わかったぞ。と、私は思った。あれはビルの点検をしているのに違いない。下にいる人は、点検が無事に終わるように見守っているのだろう。それにしてもご苦労な話だ。屋上から出て下がってくれば楽なのに、上がっていくということは、屋上に出口がないのだろう。
 まだ立ち上がって数ヶ月のビルに点検が必要だということは、ビルに貼り付けた岩のようなものが落ちてくるのかもしれない。私は怖くなって、話しかけてみた。
「てんけんなんですかー!」
 下にいる方の人が、突然の小学生の声に、びっくりしながら答えてくれた。
「いや……。あれは山登りの練習だよ」
 ……と当時は言われたンである。この世には、山の頂上にたどりつくためではなく、「クライミング」そのものをスポーツとして楽しむ人がいることを知ったのは、はるかに後、なんと「オンサイト」っていうマンガ(2005年)を読んだときなのだからしょうがない。
オンサイト! 1 (1) (モーニングKC)
尾瀬 あきら / / 講談社
ISBN : 406372462X
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 当時のワタクシは考えた。きっと太陽テントという会社は、テントを作っているのだ。山登りに行く人が増えると、キャンプ用のテントが売れるようになるから、山登りに行く人を応援するために、「山登りの練習ができるビル」を建てたのだろう。

 という文章を書くために、検索をかけました。
 太陽テントという会社が作っているのは、どうも山へいくテントではないようで。でもって、なぜか、擬岩のメーカーでした(汗。どうも結論は、阿狐が、仔のころから妄想力があったというお話になる模様。

 ちなみに、このビルはすでにないようです。
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by as-o2 | 2008-02-08 22:08 | 日記のようなもの。 | Comments(6)
Commented by at 2008-02-09 00:39 x
なんとなくフラフラきました
山をひたすらのぼる話とか面白くていいかもしれないですねえ。カフカや椎名誠の、地面をひたすら掘り進んでいく話とか。目的もなく。
Commented by straymind at 2008-02-09 09:17 x
きっとリードクライミングの練習でしょうね。社長が山好きだったのか(^^)。
でも、もしかしたら調査目的の技術練習かも知れません。
世の中にはこんな商売もあるようで。
http://www.rope-access.co.jp/manual/work-point.html
↑カッコイイと思ってしまった。浦沢直樹がN・A・S・Aの乗りでコミック書いてくれないかな。
Commented by e_vans at 2008-02-09 13:23
そんな頃から「擬岩メーカー」なるものが存在したということに驚き。
・・・あ、いや、何年前のことかなんて聞きませんから。
Commented by as-o2 at 2008-02-09 20:22
林さん
林さんがお書きになると、無限の高さの崖があって、、とかいう話になりそうで面白そうです。崖が自重で自壊しない設定とかがしてあって。

stryamindさん
いまとなってはいろいろわかりませんが、社長が山が嫌いとかワカラナイとかは、なさそうな気がします。

e_vansさん
いわれてみれば、当時から擬岩メーカーだったかどうかはわかりませんねぃ。でも擬岩だったのは確かです。当時は小学生が見ても本物ではないと判ってしまうデキでしたが。
Commented by straymind at 2008-02-11 11:34 x
他人の所有地・建物に勝手に入って登るのは御法度ですからねぇ。
危険や楽しさがわかる、山屋に理解のある社長のはずです。(きっぱり)
Commented by as-o2 at 2008-02-11 17:38
straymindさん
>他人の所有地・建物に勝手に入って登るのは御法度
なるほど。きっと社内に、登るための届出用紙とかあったんじゃないでしょうか。なんていう名前の紙だったか想像すると、顔がほころんできます。「社壁登攀許可用紙」とか。「かべのぼりとどけ」とかひらがなは無さそうだなぁ。