『夜』の思い出

 ン十年前の話になると思うのだが。
『男たちの夜かな』という週イチのラジオ番組があった。スポンサーが降りてしまい、DJである広川太一郎氏が自費で放送枠を買っているという、妙な番組だった。

 そこに、「自殺します」という葉書が投稿された。番組で読み上げられた葉書の内容は忘れたが、内容からか、文体からか、中学生か高校生という印象を記憶している。
 広川氏は、放送時間をかなり割いて、「とにかく死ぬな、俺も○ちゃんも君のことを心配している」という呼びかけをした。(○:番組アシスタント、名前忘れました)

 翌週。
 「死ぬ気はなかった。いたずらでした。心配かけて、すみません」
という詫びの趣旨の葉書が来た、と、広川氏から報告があった。

 そのときの広川氏の話の内容は、昔の話なのでうろ覚えだし、もしかしたら記憶違いもあるかもしれないけれど。
「いたずらかもしれない、という可能性は考えていた」
「でも、“自殺します、という葉書をイタズラで投書する”という精神状態と、“自殺する”精神状態は、けっして遠くない」
「だから、まず、“君のことを心配している”、と、伝えることを、最優先にすることにした」
「イタズラにひっかかりやがって、とバカにされるとしても、そんなことは俺はかまわない」
そんなことを言ったあとで。
「むろん、こんなのは偽善だ。でも、偽善であっても善は善。悪より、はるかにマシなものなんだ」
と、付け加えた。

 善のいかがわしさに、自覚的であること。偽善の恥を知ること。両方を引き受けて、怯(ひる)まないこと。
 私は当時一人のコドモとして、一人の大人の所行に、そんなものを感じとった。

 結局。2回分の放送について、いつものコーナーは中止になり、他の話題の投稿ハガキの読み上げなどはその次以降の週にもちこされた。広川氏は、放送内容の変更に関して、「他の投稿者と協力してくれたスタッフへの謝罪と感謝」で話題をしめくくった。

 当時の広川氏が、偽善の汚名は我が身に引きうける覚悟をもつ一方で、名誉の部分はスタッフと共有しようとした、……とまで今書いてしまうのは、長い時を経た美化もあるかもしれないが。

 ただ、これまで何度か、「偽善であっても善は善」という言葉が、私の背中を押してくれる局面があったのは、私自身にとって、主観的事実というヤツなのだ。……もちろん、行為の方法を練ることや、“安易”に陥らないことの必要性は、別の課題として存在するのだけれど。

 □ □ □

 この記事は、実は11/16に8割がた書いて、非公開にしてあった。

 なぜ書いたか。なぜ非公開にしたか。なぜ、いまこの記事にトラバするか。ご想像にお任せする。
 速攻でレスをいただく種類のものでもない。ただの読み物であって、「悪」の一語の関連仲間文化圏的TBであると解釈いただいても、それもまたよし。それを理由にTBをお切りになるとしても、いっさい不服は申し上げない。
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by as-o2 | 2006-12-19 12:35 | 古い雑文・今の気持ち | Comments(19)
Commented by Z at 2006-12-19 18:57 x
 広川氏といえば「チキチキマシン猛レース」のキザトト君をまっさきに思い出す私ですが、DJなどもされていたのですね。DJだと古代守風におしゃべりしていたのでしょうか。
Commented by as-o2 at 2006-12-19 19:58
>古代守風におしゃべり
いや。それだけはちが。。。。
「3」のセンでしたねぃ。
Commented by きーさん at 2006-12-20 17:52 x
阿壇さん、今日は意外な方々にお気に入り登録される日のようです。
阿壇さんの前に、仙人さんも登録されたようで、複雑な心境です。
exciteに慣れていないので、何処に書き込んだものかと悩んでしまいました。
なんとなく、この記事を選んでのコメントです。
他意も何もなく、記事内容のみを読んで引かれるものがありましたので^^
最後に一言だけ、広川太一郎って・・・誰ですか?
芸能関係には、お笑い意外は疎いもので。。。
(年代の違いかな?なんて思ったりもしてます^^;)
Commented by Z at 2006-12-20 23:51 x
to きーさんさん

>広川太一郎って・・・誰ですか?
 声優さんですが、司会業もされているようですよ。

WikiPedia「広川太一郎」:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E5%B7%9D%E5%A4%AA%E4%B8%80%E9%83%8E
Commented by as-o2 at 2006-12-21 01:10
きーさんさん、いらっしゃいませ、Zさんもどうも。
当時は有名な声優さんだったのです。
>(年代の違いかな?なんて思ったりもしてます^^;)
年代の違いは、、かなり大有りかと。。
Commented at 2006-12-21 08:20 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by as-o2 at 2006-12-21 20:58
鍵さま、こんばんは。
阿檀めは、精神年齢は不足していますが、リアル年齢はけっこう行っておりまして^^
聞いていたラジオ番組とかは、やはり、多少ズレるのではないかと思われます。

TVはけっこう再放送があるので、有名どころは意外に広く通じますね。
最近はDVDやWEB放送もありますから、中学生が昔のアニメや特撮を知っていて、こっちが微妙にうろたえたりすることが、あったりなかったり。
Commented by ロッキー at 2006-12-31 13:21 x
何ということはないのですが、ふと昔を思い出して「男たちの夜かな」をGoogleで検索していてこのBlogにつながりました。このBlogにある『夜かな』で本当に放送された事件を私も聞いていたこともあり、なんか思い出深いものがあります。『夜かな』の会員番号はもう忘れましたが、未だに『ゼツリン体操』のテーマソング歌えます!(爆)
面白いBlogどうもありがとうございました。
Commented by as-o2 at 2006-12-31 14:22
ロッキーさん、どうも。
会員番号、なんか、ありましたねぇ。『ゼツリン体操』は、かすかに聞いた気がするけど、思い出せないです。
>『夜かな』で本当に放送された事件を私も聞いていたこともあり
やっぱり、私以外にも記憶していらっしゃる方があるのだな、と、嬉しくなりました。コメントありがとうございました。
Commented by ロッキー at 2006-12-31 15:04 x
as-o2さん、早速のお返事どうも。
私事ですみませんが、実は私この『夜かな』が終了した1981年以後アメリカに移住しまして、現在もアメリカから書き込みしてます。先日古いカセットテープを片付けていてこの『夜かな』最終回の録音テープを見つけたのが原因でちょっと懐かしくなりGoogle検索した次第です。
パソコン歴は非常に長いのですが今までBlogや掲示板などの書き込みなどはしたことが無くこうして全くの赤の他人と25年前のオタク深夜番組をトピにして海を越えて会話できるのがなんとも不思議です。(笑)
Commented by ロッキー at 2006-12-31 15:05 x
ご参考までに今回の検索で見つけた『夜かな』関連のサイトがありますのでご紹介します。当時の番組に参加していた人でなければまったく意味のないサイトですけど。(爆)
http://jorf1422.hp.infoseek.co.jp/main.htm

そういえば『熱血』なんて掛け声を何度も連呼していたあの頃の広川さんはかなり熱かったのを思い出し、若きあの頃はいろいろ考えさせられたもんです。

付けたしですがas-o2さんのBlogにあった「偽善も善のうち」といった広川さんのコメントですが少なくともあの当時あの番組に参加していたした人々は広川さんが偽善でした行動だとは思っていなかったと思います。これも、あの番組をよく知っていて広川さんのパーソナリティーを知っているからそう思うだけかもしれませんが・・・
あの黒柳徹子をして『カラスの声を聞かない日はあっても広川太一郎の声を聞かない日はない』と言わしめたほど有名だった声は最近では聞けるのでしょうか?(アメリカではもちろん聞けませんので・・・笑)
Commented by as-o2 at 2006-12-31 23:26
ロッキーさん
アメリカからなのですね。素敵なサイトのご紹介ありがとうございます。
>偽善も善のうち
>参加していたした人々は広川さんが偽善でした行動だとは思っていなかったと
そうですね。。でも、広川氏は「偽善」という非難さえ引き受ける「覚悟」があったのではないかと思います。そういう姿勢を含めての事であったから、こんな時間が経っても私は覚えているわけで、で、ロッキーさんという見知らぬ方と思い出話をする僥倖にも恵まれたわけです^^
Commented by 可笑しき日本 at 2006-12-31 23:43 x
気が向いて、コメントの最新の部分をクリックしたらここに出ました。

あなた、ヤフーで知り合った人(この記事ではきーさん)に対して、自分のエキサイトブログを断片的に紹介して、コメントを求めるなんて、卑怯ですね。

また、この記事(12月19日付け)を読ませていただく限り、「あの」OYAJIと意見を同じくすると見做して構わないですよね。

少なくとも私にはそうとしか見えない。

まあ、このコメントも削除されるかとは思いますがね。
Commented by as-o2 at 2006-12-31 23:56
>可笑しきさん
私のことを何をおっしゃるのもいいのですが、きーさんを巻き込まないでください^^;
私がこの記事をご紹介した記憶はないですね。
《Y!ブログ》に《eXcite》のURLは貼ってありますので、あそこからたどり着いて、周辺記事を読んでいただいたんだと思いますが。

>「あの」OYAJIと意見を同じくすると見做して構わないですよね。
OYAJI氏と私には共通点がありますよ。そのあたりを自己解析した記事もありますが
http://aso2.exblog.jp/4842752/
もし、万一、ご興味あれば^^
Commented by 可笑しき日本 at 2007-01-01 00:25 x
「きーさんを巻き込まないで下さい」って、きーさんが何を見てかわかりませんが、ここを知る手段があったという事ですよね。

私は、あなたのコメント内でしか知る由もなかったですけどね。

あと、「自己解析した記事」など見せていただかなくても、あなたとOYAJIは、同じ穴のムジナです。その自覚がないうちは、私はあなたと話す気はないと申し上げているんですよ。
Commented by as-o2 at 2007-01-01 00:39
可笑しきさん
たぶん、http://blogs.yahoo.co.jp/adankadan/723487.htmlをみてくださったのだと思います^^
>同じ穴のムジナ
ムジナとキツネくらいの区別はあるつもりですが、だめですか。。。ミ゚。゚彡
Commented by 可笑しき日本 at 2007-01-01 00:58 x
>ムジナとキツネくらいの区別

多分、私はあなたよりもその辺の区別がつかないものの考え方なので、「だめですか」と問われても困ります。
Commented by ひろり at 2007-01-29 09:33 x
 古い友人で検索してきました。
この記事には、ちょっと胸を打たれますね。
損得抜きでする人間の行動、偽善かもしれないけど悪よりは
いいって、人間はいい人からわるい人まで多種多様ですが
自分は、絶対悪にはなりたくないです
Commented by as-o2 at 2007-01-29 18:27
ひろりさん、いらっしゃいませ。検索でたどりついていただけたんですね、嬉しいです。古い記憶をたぐって記事にしたカイがありました。