【電車男】を読んだ。

ある男性(仮称:電車男氏)が、電車の中で、暴れるヨッパライから女性(仮称:エルメス氏)を助け、その話を2ちゃんねるに書く。
2ちゃんねらーに、時には助けられ、時には煽られながら、女性と交際を始め、恋を告白するまでのスレッドをまとめたものが電車男だ。

電車男氏は、「ヲタク」である。「ヲタク」仲間の2ちゃんねらーたちが、懸命に「ヲタクの隠し方」を伝授するサマは、けなげで懸命で、滑稽で物悲しい。

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私が最初にチャットにはまった頃、「しゃべる」仲間は「ヲタク」ばかりだった。「おたく」と言わず「ヲタク」といい、時に「ヲ」一文字で略す癖は、当時、仲間から伝染されたものだ。

彼らは、誇り高い「ヲタク」だった。「ヲタク」であることを隠したりなんかしない。

「ヲタク」は、一度大事にすると決めたものは、とことん大事にしようとする。それをそのまま恋愛にも持ち込むから、彼らの恋は、少なくともその頂点においては、とても幸福に見えた。それを長くは維持できずに、壊れることはあるにしても。

電車男スレッドでは、「ヲタクであることは隠すこと=恥ずべきこと」がデフォルトであるようにも見える。自己嫌悪・自己否定。どうやら両思いみたいね、よかったね、でも本当にお互いを知った後まで大丈夫なのかな。そう、思ってしまった。

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そんな私が、ほう、と思ったのは、最後の最後。
電車男氏告白の直前の場面である。

>彼女が俺の両手を取って
>「がんばって!」
>と言ってくれた。

なんのことはない。エルメス氏は、電車男氏が無理をしていること、背伸びをしていることなど、とっくにお見通しなのだ。
>「がんばって」
とまで言って電車男氏から告白を促したあと、エルメス氏は言う。
「私も電車さんの事が好きです。だからこれからもずっと一緒にいてくれますか?」
うん、この女性なら大丈夫かもしれない。そう思った。

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BBSの最後まで読んで、やっと本当に安堵した。
>Q.エルメスさんにばれたらまずいのではないですか?
>A.電車男はエルメスさんに、本サイトをすでに見せられたそうです( ;゚Д゚)ガクガクブルブル
>「なんでもっと早く教えてくれなかったのw?」  助かったみたいだ・・・

「大丈夫かもしれない」ではない、「大丈夫だった」のだ。

全体を見てみると、2ちゃんねらー仲間にイロイロと煽られながらも、電車男氏は、エルメス氏に嘘をついていない。
自分がヲタクだと最初から言っているわけではないが、ヲタクでないとも言っていない。恋愛にも、ファッションにも、シャレた店を探してのデートにも、物慣れた「フリ」などしていない。

これは、私が危惧した「ヲタクを隠そうとする男性の物語」ではなく、「"いかにもヲタク"から"notヲタクの女性に似合う男性"に変貌しようとする物語」だったのだ。このスレッドを全部読めば、電車男氏がヲタクであることもわかる。が、エルメス氏にどれほど魅かれ、どれほど緊張し、どれほど努力して、告白に漕ぎつけたかも、わかる。

──そして、自分たちが、見ず知らずの人間たちからどれほど祝福されているかも。

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実話か、ネタか、疑う方もあるようだが。私はあえて信じてみたい。そして、遅ればせの読者として、お二人に、幸いあれと祈りたい。
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by as-o2 | 2004-06-17 19:43 | 日記のようなもの。 | Comments(0)